三次元世界の淵に眠る

雑記ばかりを垂れ流します。ツイッターから一度離れてみようとした結果こうなりました。

少年少女の活躍は確かに一人のはみ出し者を救済せしめた〜「ひぐらしのなく頃に」から生まれた一人のオタク〜前編

「オタク」と称される人々には、必ず「オタク」になるきっかけがあるはずである。ドルオタならAKBやおニャン子クラブ(よくわかっていない)、鉄オタならSLや301系(無知ゆえの妄想)、特撮オタならウルトラマンティガ仮面ライダーアギト(勝手な偏見)などなど。少なくとも、自身に強烈な感情を生み出させる何かに触れたはずだ。でなければそれらの世界に飛び込もうとしないだろう。ワテの場合、その「何か」が「ひぐらしのなく頃に」であった。

 

当時小学5年生だったワテは、ツタヤ常連客であった。VHSがまだレッドリスト入りしながらも店頭に並んでいた時代である。まだまだパソコンの普及率が低かった田舎の小学生にとって、当時のツタヤは都会で流れているアニメを唯一取り扱っていた重要拠点であった。その時のワテは専ら「クレヨンしんちゃん」、「ドラえもん」、「ケロロ軍曹」、「とっとこハム太郎」、「遊戯王」、「BLEACH」などを見ていた。ザ・月並みである。

 

そんな時、いつものようにツタヤで物色していたワテは、やたらおどろおどろしく、黒を基調としたパッケージのアニメが目に留まった。それが「ひぐらしのなく頃に」であった。当時のワテは、「ホラーアニメっぽいなあ」とパッケージと裏側のストーリー紹介を見て判断した。まだまだホラー番組が権威を持っていた時代である。見慣れたアニメに、好奇心と興奮を掻き立てるホラー要素が組み合わさっているので、見たいと思ってしまったのだ。また、ホラーっぽくて怖そうなタイトルとは裏腹に、キャラクター自体はとても「かぁいい」かった。「きらりんレボリューション」や「おジャ魔女どれみ」に近い絵柄だと感じ、まあそこまで怖くはないだろうと高を括っていた面もあった。

 

早速その日の夕食後にビデオデッキへDVDを入れ、「ひぐらし」を見た。基本両親が起きている間はテレビの占領権は父、母、ワテの順にあった。この時はちょうど父が仕事でいなかったため、母に了承をいただいて一緒に見ることになった。お茶の間パーフェクトフリーズまで秒読みである。

まさか開幕シーンからいきなり「べバキッ」「ボゴキッ」「ブチャゴキッ」といった音と共に少年が金属バットで二人の少女を撲殺するシーンを見せられるとは思ってなかった。お茶の間パーフェクトフリーズからのコールドスリープである。

 

一応DVD一枚分を見終えたが、その際の母の顔は今でも忘れられない。不快感を隠して、いつもホラー番組などを見るときにする、おどけを交えた嫌な顔を息子に向けた。「怖かったねー」と言って「いやいや」とトトロに出てくるおばあちゃんのようなセリフを放っていた。内心めちゃくちゃ不愉快不快であっただろう。この時の母親の心境を未だに聞くことができない。

 

借りることを決めた当の本人はというと、最初はあっけにとられたものの、初めてアニメでこんなにも血と狂気が入り混じった描写を見せられて興味津々であった。スプラッタ系洋画ホラーを見ている感覚に近かったと思う。暴力表現は父と一緒に見ていた洋画である程度はあったので、トラウマにはならなかった。子供が子供をバットで殴り殺す異常性に意識が向かなかったのが幸いである。

 

続く。